2014年6月16日月曜日

春琴抄を観る

目の不自由な春琴は、身の回りの世話をする佐助にことのほか辛く当たる。世間はもちろん家族までも春琴の振る舞いを諌めるが、春琴と佐助の間には他人に理解できない絆が結ばれている。それは単に男女の愛情や主従関係とも違う二人のつながりだった。春琴に思いを寄せ、彼女の三味線の弟子となった利太郎は、ある日、芸に対する甘い姿勢から春琴の怒りを買う。恨みに思った利太郎は、闇夜に乗じて春琴のもとに忍び込み、顔にひどい火傷を負わせてしまう。春琴は自分の醜い顔を佐助に見られたくないと言う。それを聞いた佐助は自ら両の目を潰し、これで生涯、春琴の顔を見ることはないと喜ぶのであった。――昨年亡くなった作曲家三木稔のオペラ処女作として幾度かの上演を重ねることのできた数少ない国産オペラ、それが「春琴抄」です。3月29日の新国立劇場中劇場での公演。私は初見でしたが、劇そのものの緊張感が素晴らしく、谷崎の世界観を見事に表現した舞台に、まったく集中を切らさず見ることができました。この日の春琴(家田紀子)と佐助(清水良一)は二人とも新宿オペレッタファミリー。そして敵役の利太郎(古澤泉)までも次回の新宿オペレッタ劇場に出演とあって足を運んだわけですが、いつも陽気な面々の放つ、迫真の“気”にすっかり押されてしまいました。難しい作品だけに稽古も大変だったと聞きましたが、その甲斐は十分に、満席の聴衆は完全に魅了されていました。