2014年10月31日金曜日

音楽とは

そんな難しいことを書こうとは思っていませんが、そんなことをふと思わせる演奏会に行ってきました。主人公は私の妹の大学時代の恩師。武蔵野音楽大学名誉教授の川﨑隆先生と奥様の周子先生の連弾リサイタルです。お二人はウィーン留学の頃より二台ピアノ連弾の勉強をしてこられ、これまでも二台ピアノの演奏会を開かれてきました。しかし隆先生が昨年、ご病気になられ毎年の演奏会も中断。懸命のリハビリによって見事、復活の演奏会を今秋、開くことになったのです。この演奏会は一台四手連弾。真剣な表情で寄り添うお二人の姿には、人間としての温かさと演奏家としての性(さが)のようなものを感じました。病気で倒れられた隆先生は、お医者様から治ったら貴方は何がしたいですかと訊かれ、ピアノが弾きたいですと答えたそうです。周子先生は一時は死も覚悟したそうですから、隆先生の音楽家としての執念が何物をも上回ったのでしょう。音楽にはそういう力があり、一人の音楽家の生き様を通して我々は震えるほどの感動を得るのです。翻って今年前半、巷を賑わせた佐村河内守氏。彼にまつわる種々のエピソードは、彼の作品とされた楽曲を本体の価値以上に感動的なものにして世に送り出したのです。あの騒動のなかで、音楽そのものの価値は変わらないといった論評もありました。しかし私は“音楽”が少なくとも人間の営みのなかで作られたり、演奏されたり、聴かれたりする以上、そこから“人間”のファクターを外すことはできないと思うのです。バッハやモーツァルト、偉大な作曲家の真作とされていた作品が後年の研究の結果、偽作とわかります。その途端、演奏会で演奏されなくなり、CD録音もされなくなる。それだって同じことです。話がそれましたね。川﨑先生ご夫妻は、アンコールにエルガーの「愛のあいさつ」を弾かれました。お二人のテーマ曲だそうです。人生を背負ったそのピュアな音色に私は深い感動を覚えました。
川﨑先生ご夫妻

2014年10月27日月曜日

第3回ウィーン・オペレッタコンクール本選を終えて

オペレッタ座主宰の黒田晋也先生からお声かけいただいて審査員の一角を務めさせていただいているコンクールの本選がありました。アマチュア部門12人、プロ部門10人で、ひとり2曲ずつの演奏でした。私にとって印象的だったのは、プロ部門も最後から二人目の方が「こうもり」のアデーレを歌ったのですが、そのとき「あれ?今日の本選でアデーレを聞いたのはこの人が初めてじゃない?」と思ったこと。そういえば、ロザリンデもアマチュア部門の方がおひとり歌っただけでした。そうそう。オペレッタコンクールはこうでなくちゃ!「こうもり」はもちろん良いオペレッタです。オペレッタのマスターピース。誰でも知ってる。でもそれをコンクールで歌うなら、こっちをものすごく感心させるように歌ってくれないと納得できないのですよ。それより、まだまだオペレッタには宝の山があるのですよ。良い曲がたくさん。それを自力で見つけてきて素敵に料理してほしい。そんな私の願いが少しずつ叶ってきているなと思えた今回の本選の選曲でした。

さてそうなると審査員室では…が気になるところでしょうが、両方の部門とも、順位の点で先生方から異論はありませんでした。つまり、先生方の付けた点数で順位はあっさり決まってしまったわけです。誰もが納得。唯一議論が大きかったのはプロ部門で1位を出すか、出さないか。このコンクールも3回目になるということですが、その間、1位が出ないというのは厳しい話です。率直に言って。でもオペレッタだからこそ要求したい諸々の要素が、もっとそろって欲しい。1位の人には。そういう思いがこの結論を導きました。私個人の感想としては、プロ部門の方々には発声や技術の先にあるドラマを表現してほしいと思いました。声がきれい、歌が上手というのは当然の前提として、その先の話をしたいのです。オペラもオペレッタも、やっぱりある情感の高まったときにアリアとなっていくのではないでしょうか。突き動かされるものが欲しいのです。お芝居や踊りを入れる方もいらっしゃいましたが、なんだか唐突に動きだすのです。そうする必然性を何も感じないのにオペレッタだから踊らなきゃ、動かなきゃと思うらしい。とても痛々しいのです。見ている方が辛い気持ちになってしまうのです。あとは役柄の研究でしょうか。歌の吟味はしてくるのに役柄についてはノータッチ。オペレッタだからでしょうか?冗談じゃない!苦みのあるシーンをニコニコしながら歌っている不可思議さ。情念のシーンを飄々と歌っている無神経さ。ないね!トスカやノルマでもそうするのかなあ?ヴィオレッタやミミでも、はしゃいで歌っちゃうのかな。絶対しない。オペレッタならいいの?良くないですね。私が「新宿オペレッタ劇場」で発掘しているようなレア作品を歌っているわけではないのですから、いくらでも資料はある。調べようがあるのです。なら、調べましょう。

アマチュア部門については、ある水準を越えるために相応の努力をされて実を結んでいる方と、その努力が勘違いした方向に向いている方、その二種類に大きく分かれたように感じました。勘違いしている人が、方向をわからないまま(習っている場合、その先生が方向を間違っている場合も多々あります)不断の努力を重ねないよう祈るばかりです。アマチュアだから何をやっても自由…なんて横柄さを私は許しません。アマチュアのオペラ団体を率いている人間として、アマチュアだからこそ損得抜き、どこまでも謙虚に、プロが使えない時間をたっぷり使って、研究して練習して珠を磨き上げるのです。お客様に聴いていただく、お客様の時間を頂戴する、自分らの未熟な芸のために。それを徹底的に自覚して舞台に乗るべきなのです。謙虚な自己満足を極めた感動こそアマチュア芸の真骨頂だと私は思うのです。

会場を出たのは午後7時30分くらいだったでしょうか。出場者の方たちにコメントをお渡しするという今回からの新しい試みのために、審査中も頭をクルクル回し、手をシャカシャカ動かしていたせいで疲労困憊。あっという間に時間が経ちました。でも疲労感のなかにオペレッタにたくさん浸った幸福感は確かにあります。この素晴らしい試みがまた来年も発展継続することを願ってやみません。

2014年10月21日火曜日

秋の散策

ホール業に就いていると土日に事業もあり、管理の当番も回ってくるので平日が自ずと休みになります。たまたま平日が三連休となり、天気も良いので少し出歩いてみました。まずは上野。恩賜公園ではヘブンアーティストという大道芸人さんたちが音楽やらパフォーマンスを道行く人に披露していました。それを横目で見ながらお目当ては上野精養軒です。先日、テレビで放送していたここのハヤシライスが無性に食べたくなった次第。まだ昼前だったので気持ちの良いテラス席でシャンパンカクテルなぞ頂きながらの優雅な昼食。甘くてコクがあって、やっぱり老舗は流石です。不忍池を眼下にみながら、そういえば昨年はガレリア座が夏に野外音楽堂に出演させていただいたけれど、今年だったらデング熱騒動で大変だったろうと思いました。来年もきっとデング熱は続くのでしょうね。そこから上野のお山の社寺をぶらぶらして、コミュニティバスに乗り合羽橋へ。最近はやりのコミュニティバス。かなり込み入った道にも入っていくのでルートを知っていれば凄く便利ですよね。とくに浅草を回る東西コースは車内アナウンスで歴史や風俗も説明してくれるので立派な観光バスなのです。合羽橋では包丁を購入。私のオーストリアの親戚筋に日本の包丁が大ブームで、毎年誰かが買ってきてと頼んでくるのです。同じ店に通っていたので、ついに店の主人に認識されてしまい、毎度どうも!と爪切り+ピーラーをプレゼントされました。喜んで…いいのでしょうね。さらに少し歩いて浅草へ。浅草寺は平日というのに大賑わい。たいへんな観光資源です。お気に入りの店で佃煮を買ったり、梅園でクリームあんみつを食べたり、観光地化していてもやっぱり浅草は楽しい所です。
 西洋料理発祥の地
 テラスより不忍池を望む
 オードブル
 絶品ハヤシライス
関東大震災で首の落ちた上野大佛 
 花園稲荷
 楽しき哉!
絵になる新旧

2014年10月4日土曜日

朝飯を食べに

墓参りのついでに築地へ朝飯を食べに行きました。平日に行くのが贅沢でしょ。「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたせいでしょうか。とにかく外国人の旅行客がたくさんです。でも市場は活気があるのが一番です。場外の鮨國さんへ。日の高いうちから飲む生ビールの旨いこと!はまぐりの酒蒸し、北海道の生ガキ、お刺身は富山の白エビ(甘くて絶品)、本鮪の中トロ(溶ける!溶ける!)、白身はハタ(歯応え最高!)と次々平らげ、締めはこの秋の鮭から獲れたイクラの醤油漬けとウニが二種類乗った、とびっきりのウニ・イクラ丼。酢飯も美味しくて大満足の朝ごはん。お勘定もこの満足感からすれば実にリーズナブル。帰りがけに、鮪と鮭をどこかで買いたいのだけどと伺ったら、やっぱり素人の私ではたぶん足を止めないようなお店を教えてくださって、そこでも美味しいお土産をゲットしました。美食の秋、本当に楽しいなあ。
築地到着!
賑わう場外

2014年10月2日木曜日

第3回ウィーンオペレッタコンクール予選~その2

アマチュア部門終了の50分後に、今度はプロフェッショナル部門の予選に入りました。当然なのですが、歌も、人前に立つという意識の点でも、プロ部門に出る方たちは違います。こちらも見方、聞き方を変える必要が出てきます。微笑ましいという評価ではダメなわけです。この人を出すことで客からお金を取れるのか?急に興行主としての厳しい目に変わります。アマチュア部門よりアデーレは多くなったものの、前回より皆さん研究されたのか曲目は多彩。声も出ているし、フレージングでも得心させてくれる歌を歌ってくださる出場者がいらっしゃいました。それは審査員の得点集計からも明らかでした。ただ私は何となしに晴れない。よく言えば実力伯仲なのだけれど、逆に言えば、この人にしよう!と即決できない。客席に押し出してくるエネルギーが足りないのかなあ?それを要求するのは酷なのかなあ?でもプロ部門は、プロ野球のドラフト会議で、甲子園球児でなく、社会人の即戦力を取るようなものじゃないのかなあ?なんて審査員席で自問自答していました。歌の上手い人はこの業界、いくらでもいます。Number OneではなくOnly Oneになる。音大では教えてくれない難しいお話です。